研究概要 |
虚血性心疾患の原因となる動脈硬化は血中脂質レベル,特にLDLコレステロールが問題とされ,LDLの酸化された酸化LDLがその本態であると考えられてきた。そして,その受容体であるlectin-like oxidized LDLreceptor(LOX-1)も動脈硬化に重要な役割をもつことが示されてきた。一方,虚血性心疾患のリスクの指標としてのCRPのようなマーカーや,原因となり得る生理活性物質にも注目が集まってきている。本研究では,血管病変を引き起こす病態下で特徴的に働いてその機能変化を導き,ひいては病態全体に影響を与える分子にっいて,LOX-1との関連を中心にその意義を明らかにすることを目的とする。 今年度は,心臓での虚血再還流障害におけるLOX-1の関与についての解析結果を得た。LOX-1ノックアウトマウスと対象のC57BL/6マウスを用いて,左冠状動脈の60分間の閉塞,60分間の再還流を行い,虚血再還流による心機能を評価した。LOX-1ノックアウトマウスで,虚血再還流障害の指標であるp38MAPK、Aktのリン酸化,iNOSの産生が抑制された。この結果より,心筋の虚血再還流障害,虚血性心疾患においてLOX-1が重要な分子であることが示唆された。動脈硬化などの血管病変を引き起こす病態を解明するために,血管の機能,血管内で起きている炎症が注目されている。血管の機能は,状況の変化に応答して様々に変化し,病態下では適応不足や過剰反応が起きている。そのような病的変化にLOX-1が強く関わっていることが考えられ,治療のターゲットとして期待される。
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