研究概要 |
破骨細胞の分化および活性化機構を明らかにすることは骨疾患の発症機序の理解に必要である. 昨年度, 遺伝子欠損マウスの解析により, 活性化アダプター分子DAP10が破骨細胞分化・活性化に必要であることを明らかにしているが, その機序は不明である. 周辺細胞を含めた総合的な破骨細胞の分化・活性化機構を明らかにするため, DAP10会合受容体の探索を試みた. 前年度作製したDAP10抗体を用いた免疫沈降法により破骨細胞前駆細胞におけるDAP10会合分子を単離し, 質量分析法を行ったところ, DAP10の新規会合分子としてDAP12に会合することが報告されていたMyeloid DAP12-associating lectin-1(MDL-1)を同定した. さらに, これらはMDL-1/DAP10/DAP12の三量体を形成し, 細胞膜へ発現することが明らかになった. また, MDL-1の抗体による刺激は破骨細胞分化を亢進させることを示した. このようにDAP10はMDL-1を介してDAP12と協調的に破骨細胞分化・活性化を制御することが示された. これらMDL-1/DAP10による新規破骨細胞分化経路の発見は骨粗鬆症や関節リウマチなど骨関節疾患の新規治療法の開発に貢献することが期待される. また, 破骨細胞およびその前駆細胞においてMDL-1/DAP10/DAP12の三量体形成の発見は新たなシグナル伝達様式の存在を示唆し, 骨関節疾患のみならず, 様々な免疫疾患の発症機序の解明と理解に繋がることが期待される.
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