活性酸素生成型酵素NADPHオキシダーゼ(Nox)はファミリーを形成しており、ヒトではNoxlからNox5までの5種類が同定されている。その中でも、食細胞に発現するNox2(gp91^<phox>)は、もっともよく研究されおり、生成する活性酸素が殺菌剤として機能することで、生体防御上重要な役割を果たしている。Nox2の膜貫通領域は、6つの膜貫通セグメントで構成され、同じく膜タンパク質であるp22^<phox>と会合していると考えられている。p22^<phox>が遺伝的に欠損した慢性肉芽腫症(幼少期より重篤な感染症を繰り返す遺伝疾患)の食細胞では、Nox2がタンパク質レベルで検出されないことから、Nox2とp22^<phox>の会合が、Nox2をタンパク質レベルで安定化していると考えられている。しかしながら、これほど重要なNox2とp22^<phox>の結合部位に関する知見はまったくない。そこで、本研究は結合に関わるNox2の膜貫通セグメントを特定することを目的とした。Noxの中でもNox5は、p22^<phox>と複合体を形成せず、単独で安定なタンパク質として存在することができる。そこで、Nox2の6つの膜貫通セグメントのいずれかをNox5と交換したキメラタンパク質を遺伝子工学的に作成し、Noxを培養細胞で再構成する系の構築を行なった。再構成系の構築後、Noxキメラとp22^<phox>との相互作用を免疫沈降法で確認したところ、いくつかのNoxキメラで、p22^<phox>との相互作用が失われているものがあった。それとは逆に、p22^<phox>の相互作用に影響を与えないNoxキメラも存在した。以上の結果から、これまでまったく不明であったNox2とp22^<phox>の結合部位に関する知見が得られた。引き続き、平成20年度はNox2p22^<phox>相互作用に焦点をあてつつ、Nox5が単独で安定化できる仕組みについても明らかにしていきたい。
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