食細胞NADPHオキシダーゼ(gp91^<phox>)は、細胞刺激時に活性化され生成する活性酸素が殺菌剤として機能することで、生体防御上重要な役割を果たしている。本研究では、まずgp91^<phox>の安定化に必要なp22^<phox>との結合に関わる膜貫通セグメントの特定を目標とした。培養細胞を用いた再構成系で、作成した様々なgp91^<phox>変異体のタンパク質レベルでの発現量やスーパーオキシド生成活性、さらにp22^<phox>との結合能を調べた。その結果、これまでまったく不明であったgp91^<phox>とp22^<phox>の結合部位に関する新たな知見を得ることができた。さらに、gp91^<phox>のアミノ酸置換によって引き起こされたタンパク質レベルでの発現低下による慢性肉芽腫症(幼少期より重篤な感染症を繰り返す遺伝疾患)のうち、いくつかの症例はp22^<phox>との結合が失われることが原因であることを見出した。 gp91^<phox>は、細胞質に存在する特異的タンパク質および低分子量Gタンパク質Racにより活性化される。以前、Racのinsert region(IR)のgp91^<phox>の活性化への関与が指摘されたが、その必要性は依然として不明なままであった。今回作成したIRを欠く様々な変異体は、いずれも野生型と同等にgp91^<phox>を活性化することができた。この結果から、IRがgp91^<phox>の活性化には必要ないことが分かった。gp91^<phox>の細胞質領域には基質であるNADPHの結合ドメインが存在する。私は、構造解析およびアミノ酸置換したgp91^<phox>変異体のスーパーオキシド生成活性を指標として、これまで良く知られているNADPH結合ドメインとは異なる様式でアミノ酸残基がNADPHを認識していることを明らかにした。
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