研究課題
Bcl-2は、通常時にはミトコンドリア外膜や小胞体膜に1回膜貫通型でアンカーされているが、アポトーシスシグナルが入ると膜に組み込まれて3回膜貫通型の活性型となるアポトーシス抑制因子である。しかし、Bcl-2の膜への組み込みに関与する因子については不明のままであった。そこで、平成19年度には、Bcl-2の膜への組み込みに関与する未知タンパク質の探索を試みた。しかし、それらに該当する因子を同定するには至らなかった。そこで、平成20年度には、Bcl-2の活性化に伴う構造変化(膜への組み込み)に作用する因子が『脂質』である可能性も視野に入れて実験を行った。具体的にはスフィンゴミエリン合成酵素(SMS1)ノックアウトマウスのMEF細胞を用いて実験を行った。ゴルジ体に局在するSMS1は、細胞内セラミド輸送経路上に位置し、小胞体で合成されたセラミドをスフィンゴミエリンに変換する役割を担っている。よって、SMS1ノックアウトマウスのMEF細胞ではセラミドは小胞体やミトコンドリアに多く蓄積すると推定される。実際、アポトーシス促進および抑制因子の各オルガネラ局在量を調べたところ、SMS1ノックアウトマウスのMEF細胞ではBcl-2およびアポトーシス促進因子Baxの小胞体局在量が約2倍に増大していた。このことから、セラミドは、Bcl-2やBaxなどの小胞体膜への組込みを促進する役割を持ち、小胞体膜上におけるアポトーシス促進と抑制のバランスを制御する役割を持つと推察された。一方で、SMS1ノックアウトマウスのMEF細胞のミトコンドリアおいては、アポトーシス促進因子であるBakの局在量が約1.5倍に増大していた。このことから、ミトコンドリアで増加したセラミドはBakのミトコンドリアへの局在を促進することでアポトーシスを促進する役割を持つと推察された。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology 28
ページ: 827-834