研究概要 |
培養細胞株(ヒト肝ガン細胞株HepG2細胞、マウス前駆脂肪細胞株3T3-L1)をdexamethasone(dex)で刺激し、インスリンレセプター(IR)のスプライシングアイソフォーム(IR-A; short form, IR-B; long form)存在比と、CUG-BP1の細胞内局在を検討した。HepG2細胞に対して、dex(0,0.01,0.1,1.0,5.0μM)を48時間処理した。dex未処理の細胞に比べて、処理後10%程度IR-Bが増加した。この変化は0.01μMのdex濃度から認められ、濃度を高くしても顕著な変化は認められなかった。このRNAレベルでの変化が、タンパク質レベルに反映しているかどうかはさらなる解析が必要である。次に、内在性CUG-BP1の細胞内局在を免疫蛍光染色法で検討した。未処理の細胞ではCUG-BP1は主に核局在を示し、Dex処理による局在性の変化は認められなかった。3T3-L1細胞では、脂肪細胞への分化誘導処理過程でdex処理を行う。分化誘導前の内在性CUG-BP1の局在はHepG2細胞と同様に主に核であった。分化誘導処理後、CUG-BP1の核外移行が認められた。この移行はdex濃度を増加させると顕著になることから、CUG-BP1の核外移行にdexが関与していることを示唆している。さらに、CUG-BP1の核外移行にはインスリン刺激が必要であった。また、3T3-L1細胞では分化誘導処理後にIR-Bの存在比が数%増加したが、HepG2細胞ほど顕著ではなかった。以上の結果は、両細胞株において、その感受性に違いがあるもののdex刺激によってIR-B存在比が増加することを示唆している。一方、dex刺激によるCUG-BP1の核外移行は細胞種により違いがあり、核外移行にはdex以外の分子が関与している可能性が示唆された。
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