これまでの免疫細胞染色による解析で、マウス前駆脂肪細胞株3T3-L1の分化誘導刺激によってICUG-BP1が、核から細胞質へ移行する現象を見つけた。in vitro解析において、HeLa細胞核抽出液中でCUG-BP1のリン酸化を示唆する結果を得ていることから、核蓄積を示すCUG-BP1はリン酸化状態にあると考えられる。そこで核内のCUG-BP1は脱リン酸化により核外移行するのではないかという仮説の検証を行った。CUG-BP1には予測されるリン酸化部位が複数存在する。変異を導入する部位として、同じCELFファミリーであるETR3にも保存され、かつリン酸化予測スコアの高いSer28、Ser99、Ser116、Thr188を選択し、Alaのコドンに置換した。また、CUG-BP1のRNA結合ドメイン2と3のリンカー領域に存在するSer/Thrに富んだ領域(Thr273-Ser304)の欠失変異体も作製した。これらの変異体をGFPのC末に融合蛋白質として発現するコンストラクトを作製しHeLa細胞に導入した。しかしながら、変異型CUG-BP1の顕著な細胞質蓄積はみられず、全て野生型と同じ核蓄積を示した。この結果は、これらの部位の脱リン酸化が、核外移行の主要因ではないことを示唆している。一方で、我々の実験系ではDexによるIRのスプライシング変化が微細なものであり、解析手法の改善の必要性が考え照れた。そこで、従来のゲル定量法よりも簡便かつ鋭敏に定量できるリアルタイムPCR法を応用し、IRの選択的スプライシングにより生じるIR-A/IR-Bの量比を検出する系を新たに構築した。従来の解析法との比較で、ヒト肝ガン細胞株HepG2細胞を用いたDex効果についてはほぼ同様の結果を得た。次に、ヒト胎児腎細胞株HEKにおいてDexによる効果を解析したところ、HepG2細胞とほぼ同様のスコアで、IR-Bの増加がみ照れた。以上の結果は、Dex処理はヒト肝・腎由来培養細胞においてmRNAレベルでIR-Bを増加させる作用があることを示している.
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