1. 研究を進める上で必要なタンパク質の測定系の構築をおこなった。 (1) ビタミンK依存性(VKD)タンパク質であるプロテインZ(PZ)および血中でPZと結合して機能を発揮するPZ依存性プロテアーゼインヒビター(ZPI)の血中動態を調べるため、ELISAによる検出法を確立した。 2. 周産期におけるPZおよびZPIの変動や習慣流産患者との関係について検討した。 (1) 正常妊娠におけるPZやZPIの変動をELISAにより測定し、妊娠中に血中のPZおよびZPIが大幅に増加することを明らかにした。 (2) 習慣流産の患者では、ZPIは正常妊娠と同様に増加したが、PZの増加が正常妊娠に比べ小さく、疾患との関与が示唆された。 (3) 妊娠におけるPZおよびZPIが変動する原因を培養細胞系を用いて調べると、プロゲステロンやエストロゲンのようなホルモンによってPZおよびZPIの発現が亢進することが明らかになった。 (4) PZおよびZPIレベルの個体間での差をみると、PZが低値を示した個体では、ZPIも低値を示し、PZとZPIの血中濃度には相関関係があることが明らかとなり、二つのタンパク質の結合が分子の安定化に寄与する可能性や遺伝子発現調節メカニズムに共通性がある可能性などが示唆された。 3. PZとX因子(FX)のin vitro発現系を用いてビタミンKやビタミンK代謝阻害薬であるワーファリンの影響について観察した。 (1) PZはビタミンKに依存して分泌されるのに対し、FXはビタミンKに非依存的な分泌形式であることが明らかになった。 (2) それぞれの因子のドメインを入れ替えることによって上記の現象の原因を調べると、タンパク質のプロペプチドおよびGlaドメインがビタミンKへの依存性やワーファリンに対する感受性を決定することが明らかになった。
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