PDLIM1はPDZ領域とLIM領域をもつ細胞骨格に局在する蛋白である。この遺伝子の機能を解析するため、抗体を作成し、乳癌細胞におけるPDLIM1の発現をsiRNAを用いて抑制した。すると、細胞骨格の形成が阻害され、また細胞の運動能の亢進が観察された。PDLIM1は細胞骨格蛋白であるactininと結合することが知られているが、その結合領域は報告によって違いがある。そこで詳しく調べたところ、PDLIM1とactininの結合には、PDLIM1のPDZ領域と中央部分の2箇所が独立に結合することが確認された。PDLIM1の結合蛋白を探索したところ、Palladinという細胞骨格蛋白が結合することを見出した。PDLIM1のPDZ領域とPalladinのC末の部分が結合に関与することを確認した。Palldinの抗体を作成し、その発現を調べたところ、多くの細胞に発現し、また細胞株によってはその大きさが顕著にことなることが判明した。また、PDLIM1とPalladinの結合は、それぞれの蛋白の細胞骨格の局在に重要であることがわかった。Palladinには多くのリン酸化される可能性のある部位があるため、リン酸化をしらべたところ、分裂期において、顕著にリン酸化されることが判明した。その部位の同定を試みたところ、N末にある多くのセリンが関与していることが確認された。N末の23個のセリンをすべて変異すると、リン酸化がなくなることを確認し、現在詳細な部位を同定している。Palladinの生理的な役割をけんとうするため、siRNAを用いた発現抑制実験、また強発現系をもちいた実験をおこなっている。
|