研究概要 |
生体内で消費される酸素の約95%はミトコンドリア内膜上の電子伝達系によるが、その1〜2%がスーパーオキシドに変換されると推定されている。すなわち、活性酸素種の主な発生源はミトコンドリアである。ミトコンドリアのインターメンブレンスペース(IMS)に細胞質型スーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)が局在することは、ミトコンドリア内膜からIMS側に放出されるスーパーオキシドを消去するのに重要であると考えられる。家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)において、ミトコンドリア内のS-ニトロシル化をうけたタンパク質量の減少が報告され、ミトコンドリア内のSOD1のCuが脱ニトロシル化を促進しているのではないかと推測された。そこで野生型とFALS変異型SOD1を精製し、脱ニトロシル化活性を測定したが、その活性値は非常に低く、生体内では他にも活性値の高い脱ニトロシル化酵素が報告されていることもあり、生体内でのSOD1における脱ニトロシル化活性は期待できるものではなかった。また、野生型とFALS変異型SOD1において、脱ニトロシル化活性の値に有意差は認められなかったことより、FALSとSOD1の脱ニトロシル化活性との関連は見いだせなかった。これらの研究結果は学術雑誌、Free RadicalBiology and Medicine 43(5),830-836,2007.に掲載されている。
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