研究課題
ファンコニ貧血(Fanconi Anemia, FA)はまれな小児遺伝性疾患で、骨髄不全、骨格異常、高発がん性が主な臨床症状である。平成17年、新たなFA原因遺伝子として同定されたFA-Jは、以前に家族性乳がん原因遺伝子BRCA1と会合するDNAヘリケースとして同定されたBACH1と同一であることが判明し、家族性乳がん発症とFA経路との関連が示唆された。申請者は、ニワトリDT40細胞FA-J破壊株を解析していたところ、免疫グロブリン重鎖(Immunoglobulin Heavy chain; IgH)遺伝子座可変領域のVDJ組換えを完了した転写活性アリルが特異的に高頻度で染色体上から欠失を起こすことを見出し、平成19年度より本助成金を受け研究を開始した。平成19年度は、まずFA-J破壊株で見られるIgH遺伝子座欠失がIgH遺伝子座領域とその周辺に限局したものであることをFISH法とニワトリ全ゲノムcomparative genome hybridization (CGH)法を用いることで明らかにした。さらに、IgH遺伝子座欠失が、AID遺伝子や相同組換えの初期過程を制御する因子BRCA2遺伝子やXRCC3遺伝子に依存していることを明らかにし、IgH遺伝子座欠失がDT40細胞で恒常的に起こっている遺伝子変換の過程で生じていることを示した。平成20年に入り、アメリカのグループより、FA-JにDNA上のG4構造という2次構造を解消する活性があることが報告された。IgH遺伝子座はG4構造を作りやすい配列を多く含んでおり、FA-J欠損のためうまく解消されずに残ったゲノム上の2次構造により上記ゲノム不安定性が引き起こされていることが考えられ、現在解析を進めている。
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