パラフィブロミンは家族性副甲状腺機能亢進症の1種である「顎腫瘍を伴う副甲状腺機能亢進症」の原因遺伝子HRPT 2がコードする531アミノ酸残基からなる蛋白質で、癌抑制蛋白質として考えられている。パラフィブロミンは通常、癌抑制蛋白質として細胞増殖を抑制しているが、癌蛋白質として知られているSV40ウイルスのlarge T抗原(LT)の存在下で、この癌蛋白質と相互作用することにより細胞増殖を促進することを明らかにした。このことは、パラフィブロミンは特定の条件下では癌蛋白質として作用する新しいタイプの癌抑制蛋白質であることを示唆するものである。パラフィブロミンのLT発現細胞の増殖促進に関与する分子と、パラフィブロミン不活化による細胞増殖に関与する分子を明らかにするため、パラフィブロミンを過剰発現させた293FT細胞とHEK293細胞のマイクロアレイ解析をそれぞれ行い、パラフィブロミン過剰発現により5倍以上発現が変動する遺伝子をHEK293細胞では571種、293FT細胞では998種同定した。これらの遺伝子の中で細胞周期調節タンパク質に焦点を当て、リアルタイムRT-PCRによる発現変動の確認を行ったが、現在のところ、パラフィブロミン過剰発現細胞とコントロール間で有意に差がある遺伝子は同定されていない。そこでマイクロアレイの結果により、差が顕著であった他の候補遺伝子の発現差異をリアルタイムRT-PCRで確認する。
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