本研究ではGM2ガングリオシドーシスの発症メカニズムの解明を目指し、以下の実験を行った。 1)抗体による各グリア細胞株における細胞内蓄積糖脂質解析 樹立しているSandhoff病モデルマウス(SD)由来グリア細胞株(ミクFグリア及びアろトロサイト)に対して、生体内基質に対するモノクローナル抗体を用いて間接蛍光抗体法により蕃積の程度及び局在性を検討し、Hex欠損に基づくGM2、GA2、末端GlcNAc含有糖鎖の蓄積が起こっており、その局在はリソソームであることが明らかになった。 2)TLCによる各グリア細胞株における蓄積糖脂質解析 SD由来グリア細胞株において総脂質を抽出し、TLCで展開後、糖脂質を検出して野生型由来細胞と比較を行い、アストロサイトではSD由来細胞においてβ-Hex欠損に基づくアシアロGM2(GA2)、GM2、グロボシドの蓄積が起こっており、さらに2次的な蓄積と考えられるGM3の蓄積が観察された。またミクログリアではアストロサイトと同様にHex欠損に基づくGA2、GM2、グロボシドの蓄積及び2次的な蓄積と考えられるGMI及びGDIaの増大が観察された。 3)2次元電気泳動によるアストロサイト細胞株におけるタンパク変動解析 SD由来アストロサイト細胞株において細胞抽出液を調製し、2次元電気泳動を行い、タンパクの変動を野生型由来細胞と比較した。その結果、幾つかのタンパクにおいてスポットの変動が観察された。 4)ミクロクリア細胞株の細胞運動解析 リアルタイム培養細胞観察装置を用いて、SD及び野生型由来ミクロクリアの細胞運動を比較した。その結果。野生型由来細胞では短い突起を延ばして周辺を動き回っていたのに対し、SD由来細胞では明らかに運動性が増大しており、長い突起を延ばして大きく動いていた。これはHexの欠損に基づく生体内基質の蓄積によりミクログリアが活性化して運動性が増大しているためと考えられる。 以上より、SD由来クリア細胞株における蓄積基質及び活性化が明らかとなり、Sandhoff病でのクリア細胞の活性化メカニズムの解明において重要なツールとして役立つと考えられる。今後活性化に関わっている因子の同定を行っていく予定である。
|