GM2ガングリオシドーシスはリソソーム酵素であるβ-ヘキソサミニダーゼ(Hex)の欠損に基づき、糖脂質であるGM2ガングリオシド(GM2)が過剰に蓄積して発症する常染色体劣性遺伝病であり、中枢神経症状を伴う代表的なリソソーム病である。 本研究ではGM2ガングリオシドーシスの発症メカニズムの解明を目指し、SDマウス由来グリア細胞株(ミクログリア、アストロサイト)を用いて、1)蓄積している生体基質の解明、2)生体内基質蓄積による細胞内シグナル異常の解明、3)サイトカイン・ケモカイン産生メカニズムの解明、4)グリア細胞活性化に関与するサイトカイン・ケモカインの探索を明らかにすることを目的としている。 平成20年度は2)生体内基質蓄積による細胞内シグナル異常の解明、3)サイトカイン・ケモカイン産生メカニズムの解明を中心に研究を行い、SDマウス由来ミクログリア細胞株において、Aktの増大及びPKCの細胞内から膜への移行を明らかにし、さらに細胞内ERK、JNKそしてPLCが野生型と比較して上昇していることを明らかにした。同様にSDマウス由来アストロサイトにおいてERK及びAktのリン酸化に異常が起こっていることを明らかにした。今後は、これらの細胞株においてSDマウスの脳で選択的に増大しているケモカインであるMIP-1αの発現上昇に関する詳細なメカニズムを解明する予定である。またSDマウス骨髄において細胞型解析を行ったところ、野生型とは異なっており、特に単球・マクロファージに異常が起こっていることを明らかにした。これらの細胞はSDマウスの脳に移行していることが既に明らかとなっており、MMIP-1αに対する応答性を解析した結果、野生型由来単球と比較してSDマウス由来単球では顕著にMIP-1αに誘引されることが明らかとなった。今後はSDマウスに標識した野生型及びSD由来単球を移植し、in vivoでの証明を試みる予定である。
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