GM2ガングリオシドーシスはリソソーム酵素であるβ-ヘキソサミニダーゼ(Hex)の欠損に基づき、糖脂質であるGM2ガングリオシド(GM2)が過剰に蓄積して発症する常染色体劣性遺伝病であり、中枢神経症状を伴う代表的なリソソーム病である。本研究ではGM2ガングリオシドーシスの発症メカニズムの解明を目指し、SDマウス由来グリア細胞株(ミクログリア、アストロサイト)を用いて、蓄積している生体基質の解明と生体内基質蓄積による細胞内シグナル異常の解明、そしてサイトカイン・ケモカイン産生メカニズムの解明を明らかにすることを目的としている。 平成21年度は2)生体内基質蓄積による細胞内シグナル異常の解明及びサイトカイン・ケモカイン産生メカニズムの解明を中心に研究を行い、SDマウス由来ミクログリア及びアストロサイト細胞株において、様々なシグナル伝達機構が異常になっていることを明らかにし、これによりミクログリアではケモカインであるMIP-1αが顕著に分泌さら、アストロサイトでは異常な増殖を示すことが示唆された。またミクログリアの形態及び運動もSDマウスでは異常となっており、幾つかのシグナルが関わっていることが明らかとなり、論文投稿の準備をしている。まだSDマウスの脳に移行している血球系細胞が単球・マクロファージであることを明らかにし、さらにMIP-1αに対する応答性を解析した結果、顕著にMIP-1αに誘引されることが明らかとなった。 以上から、SDマウス脳内では生体内基質の蓄積により、グリア細胞のシグナル伝達機構が異常となり、様々な応答が起こり、活性化マクロファージの浸潤などの病態を引き起こすことが明らかとなった。
|