研究概要 |
胸腺上皮細胞で強く発現しているAIREは, その変異によって自己, 非自己の識別機構に傷害を受け自己免疫疾患を発症させる。このように, AIREは胸腺上皮細胞における自己抗原の発現に関与していることが知られているがそのメカニズムは未だ明らかにされていない。そこで, 我々は胸腺上皮細胞においてAireがエピジェネティックな制御機構を介して, 自己抗原の発現に関与しているのではないかと考え, Ins2遺伝子座におけるDNAのメチル化やピストン修飾について解析を行った。Igf2, Ins2遺伝子座はゲノム刷り込みを受ける遺伝子がクラスターを形成している領域であり, 染色体ドメインレベルの発現制御機構が知られる。我々はこの領域におけるエピジェネティックな修飾がAire依存的であるかどうか解析するため,(1)HeLa細胞, (2)Aireを強制発現させたHeLa細胞, (3)RNAiでAireをノックダウンさせたHeLa細胞の3つの細胞株を用いて, Igf2, Ins2遺伝子座のDNAメチル化状態およびヒストン修飾を解析した。DNAのメチル化解析は, Bisulfite Sequencing法を用いてIns2およびIgf2, H19遺伝子の上流に位置するCpGリッチな領域を解析した。その結果,少なくとも解析した3つの領域においてDNAのメチル化レベルの違いは見られなかった。その上, 各々のプロモーター領域のヒストン修飾の状態は, アセチルH3, アセチルH4, ジメチルH3-K4, ジメチルH3-K9, トリメチルH3-K27のピストン修飾を認識する抗体を用いて, DNA免疫沈降法(ChIPアッセイ)を行ったが明確な違いは見受けられなかった。今後, より高次なクロマチン構造であるクロマチンループ構造の変異がないか検討する。
|