神経変性疾患における小胞体ストレス応答とオートファジーの関連性から、小胞体ストレスによりオートファジーが誘導されることを見出した。この新規分解経路の制御による脳内異常蛋白質除去の可能性を見極めるために、小胞体ストレス誘導性オートファジーによる蛋白質分解機構について検討した。小胞体ストレス誘導剤サプシガルギンを用いたタイムラプスによる解析から、小胞体ストレスによるオートファゴソームは細胞質内をはげしく移動することが観察され、このオートファゴソームは小胞体マーカーと全く一致しないことが明らかとなった。この結果は、種々の小胞体ストレス誘導剤や培養細胞を用いた解析からも同様に確認することができた。したがって、小胞体ストレス誘導性のオートファジーは小胞体内の異常蛋白質の分解ではなく、細胞質内での蛋白質分解に機能することが考えられた。我々は小胞体内腔で蛋白質の異常蓄積が認められるBBF2H7(小胞体ストレスセンサー)欠損マウスの樹立に成功した。このマウスの軟骨細胞ではII型コラーゲンの発現時期に対応して小胞体ストレス応答がみられることから、in vivoにおける小胞体ストレス誘導性のオートファジーの活性化の有無を検討した。電子顕微鏡による観察からはオートファジーの亢進やオートファジーによる小胞体内異常蛋白質の分解は認められなかった。以上の成果より、小胞体ストレス誘導性オートファジーの制御は、小胞体の外に蓄積するポリグルタミン蛋白質などにより発症する神経変性疾患に対して有効である可能性が示唆された。
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