研究概要 |
消化器癌のCD133発現と制御機構 mTOR阻害薬(Rapamycin)によりがん幹細胞マーカーであるCD133の発現が用量・時間依存的に誘導される現象を見出し、mTORシグナルの下流分子であるHIF-1Aの誘導とCD133発現について検討した。HIF-1A誘導条件である低酸素下の細胞培養において、HIF-1Aの発現亢進に伴いCD133の著明な発現抑制が観察された。これらの現象はWiDr,IM95,SNU-16の複数のがん細胞株で確認された。がん細胞におけるHIF-1Aを介した強力なCD133発現抑制効果は、HIF-1A誘導剤のDFOを用いても同様に示された。HIF-1Aを介したCD133発現抑制効果が実際の臨床検体でも認められるかどうかを胃癌臨床検体において検討した。CD133のmRNA発現と、HIF-1A、HIF-1B、HIF-2Aとの相関を解析したところ、CD133発現とHIF-1A発現との間に強い逆相関(R=-0.68)が認められた。 本研究においてがん細胞ではmTORシグナル伝達経路がCD133の発現を制御すること、低酸素などのHIF-1A誘導がCD133の発現を抑制することを初めて明らかにした。がん細胞におけるCD133の発現制御メカニズムは不明であったが、本研究によりHIF-1Aを介した発現制御機構が明らかになった。この研究はがん幹細胞の発生初期のシグナル伝達研究およびがん幹細胞機能維持の原因解明につながる重要な手がかりになると考えられる。 (論文投稿準備中)
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