本研究の目的は、ヒトナルコレプシーをはじめとする睡眠障害の新たな感受性・抵抗性遺伝子を見出すことである。昨年度までに約2万3000個のマイクロサテライトマーカーを用いたゲノムワイドな関連解析(1次・2次スクリーニング)を行ない、いくつかの候補マーカーを見出している。それら候補マーカーのうち、6番染色体上に存在するマーカー(候補領域)周辺領域について、詳細に解析を進めた結果、ナルコレプシー関連領域を絞り込むことに成功した。 本年度は、昨年度絞り込みに成功した候補領域の中には既知の遺伝子が3個、予測遺伝子が1個存在した。そのため、それら遺伝子のプロモーター領域、exon・intron領域に存在する多型を全て検出するため、データベース上に登録された塩基配列を元に特異的なプライマーを設定し、多型解析を行なった(DNAシークエンサーABI PRISM 3730: Applied Biosystems)。そして、検出された全ての多型を用いた関連解析を行なった(患者群190名、対照群190名、有意差の検定はFisherの直接検定法により行なった)。また、それらの多型の中で、ナルコレプシーとの関連を示した19個の多型に関しては(p<0.01)、使用可能な全検体(患者群370名、対照群620名)を用いた関連解析も行なった。Permutaion testの結果、4個のSNPsがp<0.001と、ナルコレプシーとの強い関連を示した。同時にそれらの多型が他集団の同疾患とも関連があるか、白人集団(患者群190名、対照群190名)および黒人集団(患者群100名、対照群100名)、韓国人集団(患者群100名、対照群100名)を用いた関連解析も実施した。
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