研究概要 |
平成19年度の検体解析の継続に加え、変異の検討、多型解析、統計的解析を行った。すべての停留精巣患者おいて抽出したゲノムDNAを用いて、INSL3においては直接シークエンス法によって、GREATについてはコーディングエクソンがそれぞれ18個、6個と多いため直接シークエンス法よりもコストパフォーマンスの良いWAVE(Transgenomic, Omaha, NE)を用いたDenaturing high-performance liquid chromatography(DHPLC法)を行い、異常パターンを示すバリアントに対しては直接シークエンス法あるいは制限酵素切断法を行って変異・多型解析を行った。その結果、変異は同定されなかったがINSL3およびLGR8/GREATの多型が6つ同定された。INSL3のAla24Ala(72G>A)は停留精巣患者において多く認められることが判明した。さらに統計解析を行ったとこうAlaは停留精巣に対し劣性効果をもたらしていることが判明した。またSF-1(Steroidogenic factor-1)については既知の多型であるGlyl46Alaについて同様に停留精巣患者において検討した。その結果、この多型も停留精巣に劣性効果をもたらしていることが判明した。変異が同定されなかったことについては妊孕性低下に関係する遺伝子変異であるがゆえに自然淘汰された可能性が考えられる。しかし妊孕性低下に関係する遺伝子であっても、我々が過去に報告したINSL3のAla24AlaやSF-1のGlyl46Alaのような劣性効果を持つ感受性因子では自然淘汰される可能性が低いと考えられた。
|