研究概要 |
平成19年度に得られた卵巣癌における分泌型Frizzled関連遺伝子を含む多数遺伝子のメチル化の情報を元に、平成20年度には我々はエストロゲンレセプターβ(ERβ)に注目した。卵巣癌においては、ERαやPRの発現がみられるものの、ホルモン療法の奏功率は低く、ホルモン不応性のメカニズムを探るため、ERβのメチル化、発現について詳細を検討した。対象は卵巣癌細胞株15株、正常卵巣表層上皮細胞(OSE)8株および卵巣癌組織55例、正常卵巣組織6例である。Real-time RT-PCRを用いてOK、ON、ERβ1、β2(βcx)、β3、β4、β5のmRNA発現レベルを検討し、組織型等の臨床病理学的因子との関連について検討した。またメチル化の解析はBisulfate sequenceを用いて検討した。 卵巣癌細胞株では、OSEに比較してON、ERβ1、ERβ2の発現が有意に低下していた(p<0.01)。対照的に、ERβ5の発現はOSEに比較して有意に発現レベルの増加が認められた(p<0.01)。さらに、ON, ERb1, ERb2の発現は癌細胞株、癌組織いずれにおいてもON領域プロモータ領域のメチル化頻度およびメチル化の領域と密接に関連していた。OSEにおいては、メチル化は検出されなかった。 卵巣癌においてはERβ isoformのうち特にβ1、β2がexonONと共に有意に抑制されており、卵巣癌の発癌・進展に関わっている可能性が示唆された。
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