研究概要 |
核内受容体の一種であるLXRαはマクロファージにおいて核小体内に強く局在し、核質にはごく微弱なシグナルが存在するのみであることを明らかにした(Sakamoto, et. al. Expression of liver X receptor α in fetal macrophages in rats. J Hist Cytochem, 55(6):641-9(2007))。肝細胞やHepG2細胞でも同様の局在を示した。HepG2細胞を用いて蛍光二重染色を行い共焦点顕微鏡で観察すると、LXRαは核小体のdense fibrillar componentという領域に局在し、RNA polymerase I補助因子UBFと共局在することが明らかとなった。核小体はリボゾームRNAと、リボゾームRNA転写に特化したRNAポリメラーゼであるRNA polymerase I (pol I)、そしてその付随因子が存在するリボゾーム生合成の場である。pol Iの阻害薬Actinomycin Dの添加により、LXRαおよびUBFの局在は変化し、核小体から核小体外へと移行した。次に、LXRαがリボゾーム転写に実際に関わっているかどうかを調べるため、LXRαの合成リガンドT0901317でHepG2細胞を刺激し、リボゾームRNA前駆体47S/45S rRNAの転写亢進または抑制の有無をRT-PCR法により検討した。その結果、10μM濃度のT0901317で24時間刺激後には47S/45S rRNAの発現の亢進を認めた。これらの所見はLXRαがリボゾームRNA転写において重要な役割を担う可能性を示唆している。今後は免疫沈降法によるLXRαとUBFとの相互作用やクロマチン免疫沈降によるLXRαとリボゾームDNAとの相互作用の検討などを行い、より詳細な分子機構の解明を行う予定である。
|