研究概要 |
1.免疫染色によるVEGF, VEGFR, PDGF, PDGFR蛋白過剰発現の検索 胃癌のホルマリン固定・パラフィン包埋組織でVEGF, VEGFR, PDGF, PDGFRに対する抗体を用いて免疫組織化学を行った.抗VEGF,抗体に対する染色強度と陽性像が癌病巣に占める面積の割合について詳細に調べて評価し,総合的に過剰発現の有無を判定した.VEGF蛋白の過剰発現は全体の53%の症例,PDGFの過剰発現は47%の症例にみられた.これらのリガンド蛋白の発現とそれぞれ受容体(VEGFR, PDGFR)蛋白発現の局在に相関はみられなかったが, VEGFとPDGF蛋白の過剰発現には統計学的な相関が認められた. 2.VEGFR, PDGFR, Smad3蛋白のリン酸化状態の検索 抗pVEGFR抗体,抗pPDGFR抗体を用いて免疫染色を行った.抗pPDGFR抗体を用いた免疫染色では,癌細胞周囲の線維芽細胞に陽性を示す像が認められたが,1.でみられたPDGF過剰発現を示す癌細胞の分布と必ずしも一致せず,PDGF蛋白発現の強度とPDGFRリン酸化の有無に統計学的に有意な相関は指摘しえなかった. 3.腫瘍新生血管の状態の検索 抗CD34抗体を用いた免疫染色を行い,癌先進部における新生血管の密度を調べた.約70%の症例で中等度以上の血管密度がみられ,1.で得られたデータと比較すると,血管密度の上昇と,PDGF, VEGFの過剰発現に統計学的な相関があった.さらに細かく調べると,PDGFの染色強度と陽性面積の両者が,各々血管密度上昇と相関があった.一方,VEGFの陽性面積と血管密度上昇にも相関がみられた.
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