研究概要 |
1. 癌におけるPDGF, VEGF蛋白過剰発現の免疫染色による検索 胃癌のホルマリン固定・パラフィン包埋組織で抗PDGF, 抗VEGF抗体を用いて免疫組織化学を行い, 癌細胞におけるi) 染色強度とii) 陽性像が癌病巣に占める面積の割合について評価し, 総合的に過剰発現の有無を判定した. PDGFの過剰発現は53%, VEGF蛋白の過剰発現は41%の症例にみられた. PDGFとVEGF蛋白の過剰発現には統計学的な相関が認められた. 2. PDGFR, VEGFR蛋白発現とリン酸化状態の免疫染色による検索 PDGFR, VEGFR蛋白は血管周囲細胞, 線維芽細胞で発現がみられたが, 1. でみられたPDGF, VEGFの発現とPDGFR, VEGFR発現の局在に相関はみられなかった. また, PDGFRリン酸化はごく一部の癌細胞周囲の線維芽細胞にが認められたのみであり, PDGF過剰発現を示す癌細胞の分布と必ずしも一致していなかった. 3. 腫瘍新生血管の状態の検索 抗CD34抗体を用いた免疫染色を行い, 癌先進部における新生血管の密度を調べた. 87%の症例で中等度以上の血管密度がみられ, 1. で得られたデータと比較すると, 血管密度の上昇と, PDGFの過剰発現に統計学的に有意な相関があり, 特に, PDGF陽性像が癌病巣に占める面積の割合が, 血管密度上昇と相関があった. 一方, VEGFの過剰発現と血管密度の上昇に有意な相関はなかった. 4. PDGF過剰発現およびPDGFR蛋白リン酸化のwestern blot法による検索 凍結組織の得られた28例中21例の腫瘍部で, PDGF過剰発現(正常部の1.5倍以上)が確認された. また, 28例中7例においてPDGFR蛋白のリン酸化が確認された. 両者に相関はみられず, PDGFの過剰発現により必ずしもPDGFRのリン酸化が生じているわけではなかった。さらに, PDGFR蛋白リン酸化の有無と血管密度上昇との相関はなかった.
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