本研究では、胃癌において、胃型・腸型質に関連している遺伝子を体系的、網羅的に同定することを目的とした。平成19年度は、胃型形質を有する胃癌2例と腸型形質を有する胃癌2例を材料にアフィメトリクス社のGeneChipを用いて網羅的遺伝子発現解析を行い、胃型・腸型形質に関連している遺伝子の発現していた。HOXA10はホメオボックス遺伝子HOXA10をコードする遺伝子であり、分化に関抽出を行った。その結果、腸型形質を有する胃癌において、HOXA10が高連する転写因子であることが知られている。外科的に切除された胃癌116例のパラフィン切片を材料にHOXA10の免疫染色を行った。非腫瘍部胃粘膜では腺窩上皮ではHOXA10の染色は認められなかったが、腸上皮化生の一部にHOXA10の染色勇が認められた。HOXA10は上皮性細胞の核に染色され、間質の細胞には染色されなかった。胃癌組織においては癌細胞の核にHOXA10の染色が認められた。10%以上の癌細胞が染色された症例を陽性とすると、60例(52%)の症例がHOXA10陽性であった。腸性形質のマーカーであるMUCの免疫染色も合わせて行い同様に評価したところ、MUC2は48例(41%)で陽性であった。MUC2陽性胃癌48例のうち、HOXA1O陽性例は32例(67%)であったのに対し、MUC2陰性胃癌68例では、HOXA10陽性例は28例(41%)であり、統計学的に有意に高頻度にMUC2陽性例でHOXA10も陽性という結果になった(P=0.0084)。以上の結果から、腸型形質の胃癌においてはHOXA10重要であり、HOXA10はホメオボックス遺伝子であることから、何らかの腸型形質を誘導する転写因子である可能性があり、HOXA10の標的遺伝子について検討を進めている。
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