研究概要 |
1. 被爆者乳癌組織の収集:1968年から1999年の間に長崎大学附属病院で病理診断された浸潤性乳癌、近距離被曝群(1.5km以内)35例、遠距離被曝群(1.5km以遠)32例、年齢および切除年代を一致させた非被爆者対照群30例の保存パラフィンブロックを収集し、FISH、免疫組織化学、核酸抽出に供するための切片を作製した。 2. 乳癌の病理組織学的再検討と被爆との関連:組織学的異型度は近距離群、遠距離群、対照群の順に有意に(p=0.0022)高く、被爆距離との有意な関連がみられた。一方、腫瘍の大きさまたはリンパ節転移と被爆距離との間に優位な関連は認めなかった。 3. HER-2遺伝子増幅のFISH解析と被爆および臨床病理学的事項との関連:HER2遺伝子増幅頻度は近距離群、遠距離群、対照群の順に有意に高率(50.0%/31.6%/29.4%,p=0.0238)であった。組織学的高異型度はHER2増幅(OR:1.78,95%CI:1.06-3.37)の有意な危険因子であることが判明した。一方、遺伝子増幅と腫瘍径や被爆時年齢との有意な関連は認めなかった。 4. HER-2、estrogen receptor(ER)とprogesterone receptor(PgR)の免疫組織化学:HER2増幅とHER2免疫染色結果との間には有意な正の相関を認め、HER2遺伝子増幅とホルモン受容体発現との間には有意な負の相関を認めた。
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