研究概要 |
がん細胞に共通にみいだされる特徴である分化異状。本研究の目的は,がん細胞に共通にみいだされる特徴である分化異状の誘導機構の一端を明確にすることである。申請者はがん遺伝子(活性型KRAS)が,肺上皮細胞に造血系・神経系細胞の分化形質を誘導することを確認し,その網羅的発現解析から,活性型KRAS下流に位置する転写制御因子群(5遺伝子)を異状分化誘導の候補分子として既に抽出している。当該課題では,これらの候補の機能解析およびがん細胞株・組織における発現解析を完遂し,分化異状の責任分子としての可能性を追求することを達成目標とした。19年度は,肺癌におけるこれらの分子の発現解析と,発現ベクターの作成を計画した。発現解析の結果,候補5分子のうち,幾らかは正常肺細胞,肺組織に比較して肺癌細胞で極端な発現上昇や,発現の消失を示すことが明確となった。興味深い挙動を示す分子の発現ベクターを作成し不死化気道上皮細胞に導入した結果,そのうち2分子は,細胞の大型化,多核化など形態変化を引き起こし,増殖活性を著しく低下させた。このような成果を目下,雑誌に投稿準備中である。20年度は,更に,具体的な分化表現系を分化マーカーの発現解析に明確にし,がん細胞の分化異状の原因機構を更に明確する予定である。
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