「目的」分化異状はがん細胞に共通にみいだされる特徴である。本研究の目的は、その誘導機構その一端を明確にすることであった。申請時に、がん遺伝KRAS下流分子の網羅的発現解析から、5遺伝子を異状分化誘導の候補分子として既に抽出していた。当該課題では、これらの候補の機能解析およびがん細胞株・組織における発現解析を完遂し、分化異状の責任分子としての可能性を追求した。「結果」候補遺伝子のうちEGR1、HDAC9には強い細胞増殖抑制活性があることが明確となった。特にEGR1を導入した細胞は神経突起様の構造を形成した。H5DAC9導入細胞では多核化する傾向が見られた。しかしながらこれらの遺伝子の強い増殖抑制活性から詳細な検討は困難であった。「考察」テトラサイクリン誘導システムなど条件発現系による実験系の改善が必要と考えられた。
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