研究課題
無秩序な自立性増殖と並び、脱分化は癌細胞の生物学的特性の形成に大きく関与している。これらの腫瘍において神経分化傾向を示すものは、神経特異的遺伝子群の異所的な発現が見られる。特にβIII-tubulin(神経特異的β-tubulin)を過剰発現する腫瘍は、抗がん剤として広く使用されるPaclitaxelに対して耐性を示すため、その耐性機構について多くの研究がなされてきた。しかし、非神経系腫瘍が神経分化に至る詳細な機構、特に、βIII-tubulinの過剰発現機構は殆ど明らかにされていない。申請者は、βIII-tubulinの制御に関与し、また近年腫瘍抑制因子としての機能が示されたNRSF/RESTに注目し検討を行った。非神経系細胞株であるHEK293やHeLa細胞は、通常状態ではβIII-tubulinタンパク質の発現は非常に低い。しかしプロテオソーム阻害剤処理によりβIII-tubulinの蓄積が確認されること、またユビキチン化が見られることから、非神経細胞でβIII-tubulinが生理的に使われていることを見出した。また、内在βIII-tubulin mRNAのノックダウンにより両細胞株で細胞増殖が抑制されること、さちに同調培養下でβIII-tubulinが発現することを見出した。βIII-tubulinはNRSF/RESTにより制御されている。申請者はChIPアッセイにより、同調培養条件下でβIII-tubulin遺伝子のRE1領域上のNRSF/REST複合体が、細胞周期依存的に変動することも見出した。現在、βIII-tubulin高発現機構として本機構の破綻を予想している。以上は、非神経系細胞におけるβIII-tubulin発現機構に言及した初めての研究であり、さらにNRSF/RESTによる神経特異的遺伝子群の可逆的制御機構を示唆する新規の研究結果である。(797文字)
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Cancer Science (In press)
International Journal of Oncology (In press)