研究概要 |
研究目的: 腎細胞癌は高頻度に骨転移を合併する。骨転移巣の形成には破骨細胞の誘導が必須であるため、本研究では腎細胞癌における破骨細胞誘導因子、RANKLとその受容体RANK発現を検討した。 結果・意義: 定量PCRによって腎細胞癌24例・非腫瘍性腎組織11例におけるRANKL,RANKL mRNA発現を調べた結果、淡明細胞癌では乳頭癌、嫌色素細胞癌および非腫瘍性腎組織に比べ有意にRANKLmRNA発現が亢進していた。淡明細胞癌、乳頭癌では、嫌色素細胞癌、非腫瘍性腎組織に比べRANK mRNAが高発現を示していた。RANKL mRNAが最も高値を示した症例は術後2年目に骨転移が発見された。腎細胞癌68例におけるRANKL蛋白発現を免疫組織学的に検討したところ、淡明細胞癌では乳頭癌、嫌色素細胞癌に比べRANKL蛋白の発現レベルが有意に高かった。また、RANKL発現はpT,pN,pM因子および骨転移と相関していた。 経過観察中に骨転移を合併した13症例はすべて淡明細胞癌であった。骨転移巣の癌細胞では高度のRANKL発現が認められ、染色性は骨芽細胞よりも高度であった。癌細胞周囲には骨吸収像が目立ち、TRAP陽性の多数の破骨細胞が出現していた。 淡明細胞癌におけるRANKL発現が癌浸潤や骨転移に関与していることが示唆された。近年、RANKLが破骨細胞の活性化に加え、癌細胞の移動能に関与することが報告されており(Jones, etal, Nature 2006, 440, 692-6)、本年度は腎細胞癌由来の細胞株にRANKL遺伝子の導入を行い癌細胞の移動能の変化を調べるとともにRANKL inhibitorであるOPGを加えて抑制効果を検討する。また、今回検討した症例に関して再発・予後との臨床経過との関連を統計学的に解析し、RANKL発現の意義を考察する。
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