研究概要 |
研究の目的 : 平成19年度の研究により高頻度に骨転移を合併する淡明細胞癌では破骨細胞誘導因子であるRANKLが発現しており、RANKL高発現例は高頻度に骨転移を合併することが明らかになった。本年度はRANKLの受容体であるRANK, RANKLのdecoy receptorであるOPG発現についても調べ、RANKL,RANK/OPG systemと予後との関係を解明するとともに、腎細胞癌由来細胞株におけるRANKL/RANK/OPG systemの意義をin vitro, in vivoの実験系にて検討した。 結果・意義 : RANKL高発現・RANK高発現・OPG低発現を示す腎細胞癌症例はその他の症例と比べ、有意に再発率・骨転移率・死亡率が高いことが分かった(P<0.0001)。そのため、RANKL/RANK/OPG systemは骨転移のみでなく、腎細胞癌の他臓器への転移・再発等の悪性化に関与していると考えられる。腎細胞癌由来の細胞株Caki-1, ACHN cellsはRANKを発現しているがRANKLは発現していない。これらの細胞にRANKL蛋白を添加して培養すると遊走能が亢進し、RANKL蛋白の作用はOPG蛋白を添加することで抑制された。同様にCaki-1cellsにRAKKL cDNAを導入すると遊走能の亢進がみられ、培養系にOPGを添加するとその作用が抑制された。さらにRANKLを導入したCaki-1 cellsをnude mouseに移植するとparental cellsおよびvectorのみを導入したCaki-1 ceUsと比較すると辺縁部での結合性が低下しており、遊走能および浸潤能の亢進が示唆された。この様にRANKL/RANK/OPG systemは骨転移のみではなく、腎細胞癌の遊走・浸潤に関わっていることが示唆されたため、RANKLを特異的に抑制することが腎細胞癌の効果的な新規治療法の開発につながる可能性があることが分かった。
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