肺癌、甲状腺癌、乳癌、大腸癌、食道癌培養細胞を用い、IGFBP-4/-2発現について検討したところ、IGFBP-4の発現は肺腺癌、肺扁平上皮癌、肺小細胞癌、甲状腺癌、大腸癌において認められたが、その発現量は正常上皮細胞に比して概ね減弱していた。肺大細胞癌、乳癌、食道癌細胞ではIGFBP-4の発現は認められなかった。またIGFBP-2の発現は肺腺癌、肺扁平上皮癌、肺小細胞癌、乳癌、大腸癌において認められたが、正常上皮細胞に比して概ね減弱していた。肺大細胞癌、甲状腺癌、食道癌ではIGFBP-2の発現は認められなかった。IGFBP-4/-2中和抗体およびIGFBP-4/-2強制発現系を用いた検討により、IGFBP-4/-2は細胞増殖抑制に働いていることが確認された。またMEK-MAPK-Egr1シグナル伝達系はいずれの細胞株においても活性化状態にあることが確認されたことより、癌細胞におけるIGFBP-4/-2発現減弱はエピジェネティック変化に起因することが推測された。そこで上記培養細胞から抽出したDNAを用いBisulfite sequence法によりIGFBP-4/-2プロモーターのメチル化状態について検討したところ、多くの細胞株においてメチル化が確認され、IGFBP-4/-2の著しい発現低下を示す細胞株ではIGFBP-4/-2プロモーターが過メチル化状態にあることが確認された。なおいずれの細胞株においてもegr-1プロモーターの過メチル化は見られなかった。 IGFBP-4プロモーターには肺上皮・甲状腺上皮に特異的に発現しているThyroid Transcription Factor-1(TTF-1)結合部位があることから、Luciferase assay系を用いてIGFBP-4発現へのTTF-1の関与について検討を行ったが、現在までのところTTF-1の関与を積極的に支持する結果は得られていない。
|