癌細胞の過増殖に対するフィードバック機構の崩壊が、非小細胞肺癌組織内においても一般的にみられるか否かを検討するため、非小細胞癌(腺癌および扁平上皮癌)組織におけるIGFBP-4/-2の発現状態を検討するとともに、上記非小細胞癌組織から抽出したDNAおよびMethylation-specific PCR(MSP)法を用いてIGFBP-4/-2プロモーターのメチル化状態について検討した。その結果、肺腺癌組織におけるIGFBP-4の発現は46例中19例で高発現、17例で低発現を示し、10例で非発現であった。また肺扁平上皮癌組織では15例中高発現が6例、低発現が5例、非発現が4例であった。IGFBP-4プロモーターに対するMSP解析では、腺癌46症例中31例、扁平上皮癌15症例中7例にメチル化が存在することが明らかとなった。IGFBP-2の発現性については、肺腺癌症例48例中、高発現20例、低発現18例、非発現10例であり、肺扁平上皮癌では17例中、高発現12例、低発現5例、非発現0例であった。また、IGFBP-2プロモーターのメチル化状態については、腺癌症例34例および扁平上皮癌5例で認められた。以上をまとめるとIGFBP-4/-2遺伝子プロモーターにメチル化の存在する肺癌症例でその発現が弱い傾向にあったことから、このフィードバック機構の破綻は、in vivoにおいても非小細胞肺癌に起きている現象であることが示唆された。また近年、genomic DNAのメチル化とDNA metyltransferase(DNMT)との関連性が報告されていることから、種々の癌細胞ならびに非小細胞肺癌組織用いてその関連性の有無について検討したところ、IGFBP-4/-2プロモーターのメチル化状態とDNAメチル化に関わるとされる分子(Dnmt1)との間に関連性は認められなかった。
|