神経および脳腫瘍の幹細胞マーカーであるCD133の発現量は、神経芽腫の悪性な予後と相関する遺伝子MYCNの増幅と相関して増加することを見出した。そこで、神経芽腫細胞株を用いてCD133を高発現または発現抑制したところ、CD133発現は、細胞増殖速度、軟寒天中でのコロニー形成、ヌードマウスの腫瘍形成能のそれぞれに対し、促進的に働いていることが明らかとなった。神経芽腫においてCD133の発現を抑制すると神経芽腫突起の伸長が誘導され、逆にCD133低発現の細胞でCD133を高発現させると神経栄養因子GDNFの受容体RETの転写が抑制され、GDNF依存的な細胞分化を著明に抑制することが明らかとなった。このことからCD133が受容体RETを介して神経芽腫のStemnessの維持に関る重要な役割を担っていることが示された。CD133の遺伝子の上流には、3箇所のMYCNの結合配列が見られ、MYCNの直接結合を確認した。また、神経芽腫細胞においてMYCNの発現を誘導したところCD133の転写が促進された。このことから、CD133は神経芽腫の腫瘍形成能、増殖能を充進するとともに、細胞のStemnessを保つ機能を有することが明らかとなった。さらにMYCNはCD133を直接転写することで、神経芽腫を悪性化させることが示唆された。異常に結果について、現在論文投稿準備中である。また、CD133を高発現することで、細胞増殖能が亢進した細胞株については、遺伝子発現パターンを解析中である。今後その細胞を用いてがん幹細胞を多く含むSide populationおよびCD133高発現分画の取得および、臨床組織を用いた遺伝子解析から、神経芽腫の発がんメカニズムを明らかにしていく。
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