研究概要 |
腫瘍における放射線化学療法の病理組織学的効果判定を行うために、同一の放射線化学療法を施行した直腸癌43症例において組織切片上の残存腫瘍面積の数値化を行い、臨床病理学的因子との関連を検討した。すべての症例は45Gyの放射線療法と5-FU 400mg/mm^2/day 5週間が施行され、治療終了後6週間以内に外肛門括約筋温存経腹経肛門直腸切除術が施行された下部直腸癌症例である。残存腫瘍面積は残存腫瘍最大面において行った。腫瘍組織の写真を撮影し、形態解析ソフト(WinRoof, Mitani Corporation)を使用して残存腫瘍面積を測定した。残存腫瘍面積は総面積(T-ART, total area of residual tumor),固有筋層もしくはそれより内側(ART-BM, area of residual tumor beyond the muscular layer)に分けて検討した。T-ART, ART-WM, ART-BMのいずれもT stage,腫瘍のdown stage,脈管侵襲及び神経周囲侵襲と相関が見られた。ART-BMが大きい腫瘍は小さい腫瘍と比較して有意に無病再発期間が短いことが分かった(P=0.02)。一方、T-ART, ART-WMは再発との関連を認めなかった。以上の結果から、腫瘍の残存はその部位によって臨床的意義が異なり、筋層を越える腫瘍の残存が再発に関わることが分かった。
|