昨年度、担癌宿主における免疫抑制への関与が注目されているCD11b^+Gr-1^+未成熟ミエロイド系細胞(ImC)について、腫瘍浸潤ImCが主に単球由来マクロファージと好中球により構成されることを明らかにした。またCCR2^<-/->マウスにおいて腫瘍局所からImC単球画分を欠失させた状態においては好中球画分が相補的に増加すること、腫瘍局所における壊死領域が拡大する一方でT細胞浸潤は減少し、腫瘍増殖抑制は認められない事を明らかにした。今年度は腫瘍局所からImC好中球画分を減少させ、同画分が腫瘍増殖およびT細胞免疫応答に果たす役割を検討するため、野生型およびCCR2^<-/->に皮下腫瘍を誘導し、抗Ly-6G抗体による好中球のin vivo depletionを行った。野生型およびCCR2^<-/->マウスいずれにおいても好中球除去による腫瘍増殖への影響は認められなかったが、好中球除去により腫瘍内壊死領域の縮小を認めた。また腫瘍および腫瘍所属リンパ節におけるエフェクターT細胞数については、好中球除去の影響を認めなかった。これらの結果から、好中球は腫瘍組織を直接傷害する機能を持つが、好中球の増加のみでは腫瘍増殖の抑制には至らないこと、またT細胞応答への直接的な関与は少ない事が明らかとなった。今後好中球の持つ抗原非特異的な腫瘍傷害作用とT細胞による抗原的な抗腫瘍作用を組み合わせることで、新規な癌免疫療法の開発につながる事を期待している。
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