本研究は、自己免疫性肝炎のモデルあるマウスのCon A誘導性肝炎において、T/NKT細胞に傷害された肝細胞から放出されたATPがMφの活性や肝炎悪化に関与する経路を検討した。 1) Con A肝炎の症状時の血清中ATP濃度 Con Aを投与後、8時間から24時間の間に、肝炎の指標である血清ALT値の著しい上昇が認められた。同時に、16時間をピークとする血清ATP値の上昇が確認された。このことから、Con A投与によるリンパ球性の肝炎により、傷害された肝細胞からALTが放出されたことが示唆された。 2) in vitroでATPとCon A刺激によるMφのサイトカイン産生とそのシグナル経路 in vitroでATPとCon A刺激によるMφのサイトカイン産生能を測定した。その結果、IL-1βとTNFαが、Con A単独刺激よりATPを加えると有意に産生が増強され、Mφ上のP2X_7受容体とATPの結合による反応であると示唆された。また、IL-1βの産生はERK1/2のシグナル経路が重要であることが示された。 3) NKT細胞およびT細胞へのATPの影響 in vitroでATPとCon A刺激によるNKT細胞およびT細胞のサイトカイン産生能を測定した。その結果、IL-4が、Con A単独刺激よりATPを加えると有意に産生が増強された。これは、組織傷害でのATPがNKT細胞やT細胞にも更なる活性をもたらしていることが示された。 本検討より、肝炎により肝細胞から放出されたATPは活性化したMφ、NKT細胞およびT細胞を更に刺激して、サイトカインの産生増加を誘導することにより肝炎の悪化につながると示唆された。
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