がんの発生や進行過程では、炎症反応が重要な役割を果たしていると考えられている。これまでに作製した胃癌発生モデルマウス(K19-Wnt1/C2mEマウス)を用いた解析により、PGE_2シグナルに依存的に粘膜に浸潤するマクロファージとその活性化が、腫瘍発生に必要である事が示唆された。また、モデルマウスの胃癌や腸管腫瘍組織の解析により、組織マクロファージの遊走に関与するケモカイン、CXCL14の発現が誘導されている事も明らかにした。CXCL14はPGE_2との協調作用により組織に強いマクロファージ浸潤を誘導する事が報告されている。本研究では、腫瘍発生過程でのマクロファージ浸潤におけるCXCL14の役割を解明する事を目的として、CXCL14遺伝子ノックアウトマウスの作製を行ない、複数の腫瘍発生モデルマウスとの交配実験を行なう。 今年度は、CXCL14遺伝子ノックアウトマウスの作製を行なった。マウスES細胞を用いて、CXCL14遺伝子の第2エクソンに、IRES配列を繋いだGFP遺伝子を相同組換え法により挿入した。このES細胞を用いて凝集法によりキメラマウスを複数作製し、GFPと組換えたCXCL14遺伝子を生殖系列で伝達したF1マウスの作製に成功した。このマウスを、PGE_2に起因した胃炎発症モデルのK19-C2mEマウス、および腸管腫瘍発生モデルのApc^<Δ716>マウスとそれぞれ交配し、これまでにCXCL14-/-の各モデルマウスを数匹得た。次年度は、これらのマウスの組織解析を行ない、炎症や腫瘍発生におけるCXCL14の役割を明らかにする。
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