近年、腫瘍の形成には腫瘍細胞だけではなく、腫瘍細胞により刺激を受けたマクロファージ(tumor-associated macrophage;TAM)や、線維芽細胞(cancer-associated fibroblast;CAFs)などの間質細胞が重要な役割を持つことが明らかとなってきた。2-デオキシ-D-リボース(D-dRib)は、チミジンホスホリラーゼ(TP)が関与するヌクレオチド代謝において非酵素的に産生され、血管新生作用を持つ。また、腫瘍組織への浸潤部にTPが発現しているTAMが存在し、癌細胞の浸潤や転移にTPもしくはD-dRibの関与を示唆する報告がある。しかし、腫瘍が形成する微小環境に関して、腫瘍組織内の活性化マクロファージ(TAM)が発現しているTPを介した作用の研究は、未だ行われていない。 そこでまず、D-dRibによる線維芽細胞の遺伝子の発現変化を探索したところ、特に低酸素条件下において、糖の取り込みや細胞の生存に関わるいくつかの遺伝子発現が認められた。さらにD-dRibは線維芽細胞の細胞線溶系酵素の上昇と運動性の亢進を誘発した。現在、線維芽細胞のこれら因子がTP発現TAMに影響を受けるのかを明らかにする目的で、線維芽細胞とTP発現TAMの共培養実験系を構築し、これら細胞の細胞間シグナルの関連を調べている。
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