癌や創傷治癒などの微小環境下でのデオキシ-D-リボース(D-dRib)の間質細胞に対する影響を調べた結果、以下のことが明らかとなった。 1. In vitro系において、1)D-dRibはヒト正常線維芽細胞(TIG3-20)を活性化(線溶系酵素uPAの発現やuPA活性の亢進)すること、2)D-dRibはTIG3-20の運動能を亢進させ、その作用機序の一つとしてuPA/uPARからmTORシグナルを介した細胞運動に重要なRho-GTPase(Cdc42およびRac1)の活性化を促すこと、を明らかとした。 2. マウス創傷治癒モデルにおいて、D-dRibは創傷治癒初期で有意な治癒促進効果が認められ、対象群に比較し創傷治癒効果が高かった(投稿準備中)。 3. 低酸素・グルコース飢餓環境下(微小環境モデル)において、D-dRibを添加した条件下でのTIG3-20の遺伝子の発現変化について、cDNAアレイを用いて探索した。その結果、グルコース飢餓により発現減少した遺伝子群の中で、D-dRib添加により発現量が回復した遺伝子群(約900)が確認された。このなかで、FGF2、integrinサブユニット(α2、α4、αVおよびβ1)、IL-6 receptorなどの細胞の増殖・生存や運動能に関与するいくつかの遺伝子を見出した。また、D-dRibの取り込みに影響するのではないかとみられるGLUTのサブタイプや糖・脂質代謝に関する遺伝子の発現変化を認め、D-dRibが微小環境下での細胞内の代謝経路にも影響する可能性を見出した。
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