心筋梗塞は動脈硬化巣の破綻に伴う血栓形成により発症する。血中の蛋白分解酵素であるa disintegrin and metalloprotease with a thrombospondin type 1-motif 13(ADAMTS13)は血栓形成に重要な接着分子であるフォンウィルブランド因子(VWF)を切断しそのサイズを調節していることより、抗血栓薬の候補のひとつである。本研究では、動脈血栓形成におけるADAMTS13の局在と機能を明らかにするために、急性心筋梗塞症例の冠動脈血栓、in vitroでの血栓形成を可視化できるフローチャンバー、ならびに家兎動脈硬化性血栓モデルを用いて検討する。 平成19年度、ADAMTS13は全ての冠動脈血栓に存在し、VWFとほぼ一致して局在した。フローチャンバーにおいて、速い流速下で生じる血栓はADAMTS13活性阻害抗体により有意に増大した。一方、遅い流速下では、血栓の大きさに有意な差を認めなかった。灌流により高分子量のVWFマルチマーは減少したが、ADAMTS13阻害抗体はこれを抑制した。 ADAMTS13は血栓内に存在し、速い流速下でVWFを切断することで血栓の形成を抑制することが示唆された。これらの結果は新規抗血栓薬の開発に有意義なものと考えられる。 平成20年度は、家兎動脈硬化性血栓モデルを用いて、生体内でのADAMTS13の機能を検討する。
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