本研究では、造血幹細胞から肝細胞への分化機構を、miRNAの観点から解析することを試みている。miRNAは近年、分化、発生に重要な機能を担うことが示唆されており、その詳細な分子機構の解明は、再生医療の点からも有用であると考えられる。本年度中にマウス骨髄から造血幹細胞であるSP細胞を分取し、miRNA arrayを用いてhepatocyteとの間で異なる発現を示すmiRNAを解析した。SP細胞、hepatocyteそれぞれに特異的に発現していると考えられるmiRNAに関してはリアルタイムPCRによるvalidationを行った。その結果、SP細胞特異的であるmiRNAが9個、hepatocyte特異的であるmiRNAが3個得られた。SP細胞特異的であると考えられた9個のうち4個は、骨髄細胞集団との発現比較解析から、造血幹細胞マーカーではなくむしろ骨髄細胞マーカーであることが明らかとなったが、miR-127はSP細胞での特異的発現がみられ、miR-127が造血幹細胞マーカーであることがわかった。MiR-127の幹細胞における機能について考察中である。一方、hepatocyte特異的なものとしてはmiR-122、miR-146が得られている。MiR-122に関しては肝臓特異的なmiRNAであることが多くの論文で証明されているがmiR-146に関してはhepatocyteとの関連は明らかになっていない。来年度中にこれらのmiRNAがhepatocyteの機能、分化に関与するかどうか、考察していきたいと考えている。
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