ヒトマラリア原虫を含むマラリア原虫7種(Plasmodium malariae、P.ovale、P.fieldi、P.inui、P.hylobati、P.coatneyi、P.mexicanum)について、ミトコンドリアゲノムの全長配列を決定し、GenBankに配列登録されているマラリア原虫14種(P. falciparum、P. vivczx、P. reichenowi、P. cynomolgi、P. simiovale、P. knowlesi、P. fragile、R. gonderi、P. yoetii、P. chabaudi、 P. gallinaceum、P. relictum、P. juxtanucleare、P. floridense)を加えることでマラリア原虫の網羅的な系統樹を得た。そして、宿主の系統樹との比較により年代決定点を確定した上で、ミトコンドリアゲノムの突然変異率を決定し、原虫種の分岐年代を推定した。その結果、マラリア原虫は4つの主要な系統(霊長類原虫、げっ歯類原虫、P. falciparum/P. reichenowi、鳥類/爬虫類原虫)に分かれること、これら主要系統は宿主転換による急速な多様化により出現したこと(マラリアビッグバン)、を見いだした。上記の知見は、マラリア原虫の寄生適応における宿主転換の重要性を示すものであり、従来の"宿主転換は例外的な現象"とする見方を変えるものである。本成果は、「研究の目的」にて提示した課題のうち、"原虫の分岐年代"過去の宿主転換の有無"原虫の突然変異率"を明らかにするものである。
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