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2007 年度 実績報告書

ピロリ菌感染に起因する胃粘膜細胞間接着障害の影響

研究課題

研究課題/領域番号 19790314
研究機関東京大学

研究代表者

鈴木 仁人  東京大学, 医科学研究所, 助教 (70444073)

キーワード感染症 / 癌 / シグナル伝達 / 病原細菌 / 病原因子
研究概要

ピロリ菌の分泌蛋白CagAは細胞内でSrc/Ablファミリーキナーゼによってチロシンリン酸化を受け、様々なシグナル分子と結合し、細胞増殖、細胞運動、細胞死など多様な細胞応答に関与する。CagA陽性のピロリ菌が感染した上皮細胞では、本来、細胞-細胞間の接着部位にアンカーされているβ-カテニンが高頻度に核内に蓄積する。通常、細胞質内のβ-カテニンはユビキチン・プロテアソーム系によって速やかに分解される。種々の分子生物学的解析によって、CagAによるPI3K/Akt経路の活性化はβ-カテニンを安定化させることが示唆された。CagAは自身のチロシンリン酸化に依存してPI3Kの触媒サブユニットp85と結合した。しかしながら、宿主内でリン酸化されるチロシンをフェニルアラニンに置換したリン酸化耐性CagA変異体も依然としてPI3K/Akt経路の活性化、その下流のβ-カテニン/TCF経路およびNF-κB経路の活性化を誘導可能であった。そのため、CagA内にリン酸化チロシンとは別に何らかの生物学的活性を示す構造があり、それがPI3K/Akt経路の活性化に寄与する可能性が考えられた。β-カテニン/TCF経路への影響などを指標に種々のCagA変異体を精査した結果、CagAのリン酸化非依存活性を担うCRPIA配列(CRPIA: conserved repeat responsible for phosphorylation-independent activity)を同定し、アラニンスキャニング法によって必須アミノ酸を同定した。このアミノ酸に変異を持つCagAを発現するピロリ菌は、PI3K/Akt経路の活性化能が低下しており、菌感染で誘導される炎症性サイトカインの産生が劇的に減少した。以上の結果より、ピロリ菌の病原因子が宿主シグナル伝達系を攪乱し、胃粘膜に増殖、炎症反応を惹起する新たな分子機構の一端が明らかとなった。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2008 2007

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Versatility of Shigella as a mucosal invader.2008

    • 著者名/発表者名
      Ogawa, M., et. al.
    • 雑誌名

      Nat Rev Microbiol、 6(1)

      ページ: 11-16

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Helicobacter pylori dampens gut epithelial self-renewal by inhibiting apoptosis, a bacterial strategy to enhance colonization of the stomach.2007

    • 著者名/発表者名
      Mimuro, H., et. al.
    • 雑誌名

      Cell Host Microbe、 2(4)

      ページ: 250-263

    • 査読あり
  • [雑誌論文] lmmune tolerance correlated with downregulation of the surface Toll-like receptor 4(TLR4)and TLR2 expression induced by an oral Salmonella vaccine promotes cross-protection in mice.2007

    • 著者名/発表者名
      Eguchi, M., et. al.
    • 雑誌名

      FEMS Microbiol lmmunol 50(3)

      ページ: 411-420

    • 査読あり
  • [学会発表] ピロリ菌CagAのチロシンリン酸化非依存的活性2008

    • 著者名/発表者名
      鈴木仁人
    • 学会等名
      第81回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      国立京都国際会館(京都府京都市)
    • 年月日
      2008-03-26
  • [学会発表] ピロリ菌CagAのリン酸化非依存的な発癌シグナル活性化機構2007

    • 著者名/発表者名
      鈴木仁人
    • 学会等名
      第30回日本分子生物学会年会・第80回日本生化学会大会 合同大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2007-12-13

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公開日: 2010-02-04   更新日: 2016-04-21  

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