研究課題
本研究は、自然免疫系を介した宿主防御の発現機序の解明を目的とし、Toll-like receptor(TLR)の病原体認識や宿主防御における役割を代表的な細胞内寄生菌であるリステリア(Listeria monocytogenes)の感染モデルを用いて解析している。グラム陽性菌であるリステリアの菌体やリポタイコ酸は主にTLR2を介して認識されるためリステリア初期感染におけるTLR2の役割が期待されたが、TLR2欠損マウスはリステリアに対して正常マウスとほぼ同程度の感染抵抗性を示した。一方、ほぼ全てのTLRのアダプター分子であり下流シグナルの伝達に必須なMyD88の欠損マウスがリステリア感染に極めて高い感受性を示したため、他のTLRが補償的に宿主防御を担う可能性がまず考えられた。そこで、細菌DNAを認識するTLR9に注目しTLR2とTLR9を二重欠損するマウス系統(TLR2-/-TLR9-/-)を樹立したが、二重欠損マウスでもリステリア感染に対する抵抗性の顕著な低下はみられなかった。ところが、抗リステリア防御に必須なサイトカインであるIFN-γおよびTNFαの産生応答はTLR2またはTLR9の単独欠損でも有意に低下し、二重欠損マウスでは著明に低下していた。この結果から、TLR2およびTLR9を介した病原体認識はIFN-γやTNFαの産生応答には重要であるが、抗リステリア防御に補償的に働くその他のTLRまたはTLR以外のMyD88依存的防御因子がさらに存在することがわかった。IL-18はリステリア感染でMyD88非依存的に誘導されるがその受容体の下流のシグナル伝達にMyD88が必須であるため、IL-18をTLR以外のMyD88依存的防御因子の候補の一つとして考え、TLR2、TLR9およびIL-18を同時に欠損するマウス系統(TLR2-/-TLR9-/- IL-18-/-)を樹立した。
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