酵母細胞だけでなく、病原性真菌であるカンジダにおいてもアポトーシス機能を保持していることが明らかになったため、その分子生物学的機序の解明を目指して究を行っている。哺乳類同様に、カスパーゼまたはその類縁分子がアポトーシスの中心的役割を担っていると考えられたため、我々が以前開発した酵母細胞を用いたスクリーニングシステムを利用して、ヒトカスパーゼと同じ基質を持つプロテアーゼの検索を行った(ゲノムDNAのライブラリーを作製し、ヒトカスパーゼの機能的ホモログを検索した。)カンジダでは該当する分子が検出されなかったため、類似分子であるメタカスパーゼをクローニングして、遺伝子欠損株と過剰発現株を作製した。メタカスパーゼの過剰発現のみではアポトーシスは誘導されないが、酸化ストレスなどの存在下では有意にアポトーシスが惹起され、メタカスパーゼ欠損株ではこの現象が抑えられることを確認した。また、メタカスパーゼの欠損のみでは病原性に影響を及ぼさないことが明らかになった。その後、メタカスパーゼ依存性アポトーシスのシグナル伝達経路の解明を目指し、いくつかの遺伝子欠損株を作製に成功した。現在、これらの株を使用して、アポトーシス誘導物質のスクリーニングを行っている。これらは病原性真菌において初めての発見であり、将来的に病原性真菌に特異的なアポトーシス誘導機序が解明できれば、新規薬剤の開発に有用な情報をもたらすと期待される。
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