昨年度までに、ニパウイルスのアクセサリー蛋白質であるV及びC蛋白質がMyD88/TRAF6を介したIFN-α誘導経路を強く抑制すること、さらにV蛋白質がIFN-αの転写因子であるIRF7と特異的に結合することが示されていた。そこで、本研究課題では、こうしたIFN-α産生経路の抑制機能を、近縁のパラミクソウイルスが共通して持っているのかどうか検討した。センダイウイルス、パラインフルエンザウイルス2型及び3型、麻疹ウイルスのそれぞれのV蛋白質発現ベクターを作成し、関与するシグナル伝達分子とIFNプロモータを配したレポータプラスミドと共に哺乳動物細胞に導入した再構築系を用いて解析した。その結果、試したすべてのウイルスのV蛋白質がMyD88/TRAF6を介したIFN-α誘導経路を強く抑制することが明らかになった。 次に、これらのV蛋白質がMyD88/TRAF6依存的経路のどの過程を阻害しているのか検討するために、それぞれのウイルスV蛋白質がシグナル伝達分子と相互作用するかどうか免疫沈降法を用いて評価した結果、今回試したすべてのウイルスのV蛋白質がIRF7と特異的に結合することが示された。さらに、センダイウイルスV蛋白質の欠損変異体を作成しIRF7との結合責任領域を評価した結果、V蛋白質のC末端側領域がIRF7との結合に重要であることが示された。 以上の結果から、パラミクソウイルスのV蛋白質は、IRF7と特異的に結合することにより、その機能を阻害し、IFN-αの産生を抑制する可能性が示唆された。また、その結合にはV蛋白質のC末端領域が関与することが示されたが、この領域はパラミクソウイルス間で高度に保存された領域を含んでおり、パラミクソウイルスが共通した機構を利用して、IFN-α産生を抑制している可能性が示唆された。
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