C型肝炎ウイルス(HCV)は肝臓に慢性の炎症を起こし、高率に肝細胞癌を引き起こすが、その一方で、C型慢性肝炎患者において肝細胞のアポトーシスの亢進が認められている。HCV感染に伴うアポトーシスは、HCV特異的細胞傷書性Tリンパ球を介した宿主免疫応答もしくはウイルス感染により誘導されると考えられる。本研究では、HCV J6/JFH1株とHuh7.5細胞を用いて、HCV感染初期における肝細胞の細胞障害の分子機序について検討し、以下の成果を得た。1、HCV感染細胞においてDNA断片化が亢進したことから、HCV感染によりアポトーシスが誘導されることが分かった。2、HCV感染により、caspase-3が活性化され、活性化型caspase-3の発現の亢進、核への移行及びcaspase-3の基質であるPARPの切断が見られた。3、HCV感染により、アポトーシス促進タンパク質であるBaxのミトコンドリアへの移行が亢進した。4、HCV感染細胞のミトコンドリア膜電位が低下し、ミトコンドリアの膨張が見られた。さらに、チトクロームcの細胞質への放出及びcaspase-9の活性化が見られた。5、HCV感染細胞において、ミトコンドリア内のスーパーオキサイドの産生が増えたことから、HCV感染によりミトコンドリアにおいて酸化ストレスが誘導されることが分かった。6、HCV感染によるERストレスの誘導は認められなかった。以上の結果から、HCV感染により、Baxが引き金となり、ミトコンドリアを介するcaspse-3依存的なアポトーシスが誘導されると考えられた。このことは、HCV感染初期において、ミトコンドリア障害を介するアポトーシスの誘導が細胞障害の要因の一つであることを示唆する重要な知見と考える。
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