成人T細胞白血病(ATL)のTGF-beta1抵抗性にSmad7の高発現とTCF8の発現低下が関与していることを証明するために以下の実験を行った。TGF-beta1感受性ヒト肝細胞株HepG2にSmad7を過剰発現させると、TGF-beta1誘導性Smad応答性プロモーター3TP-Luxの転写活性が抑制された。しかし、TCF8をSmad7発現プラスミドと共に発現させるとSmad7による転写抑制が解除された。Smad7とTCF8タンパク質間相互作用を免疫沈降実験と免疫蛍光染色法により検討した。293T細胞にFlagタグを付けたSmad7及びTCF8を過剰発現させた全細胞抽出液において抗Flag抗体を用いた免疫沈降実験を行ったところ、TCF8の共沈を検出した。内在性タンパク質の相互作用は、内在的にSmad7とTCF8を発現しているヒトT細胞白血病細胞株MOLT4細胞抽出液における免疫沈降実験により確認した。TCF8及びSmad7の細胞内局在を調べるために、MOLT4とATL細胞株KK1を用いて細胞染色を行った結果、両細胞内におけるTCF8とSmad7の免疫蛍光は大部分が核内に存在することが観察された。TCF8が直接Smad7と結合し転写抑制活性に影響を及ぼす可能性を検証するために、HepG2細胞にSmad3、Smad7並びにTCF8発現プラスミドと3TPレポーターを導入し、クロマチン免疫沈降法によりプロモーターDNAに対する結合能を解析した。その結果、Smad3とSmad7を共発現させた細胞においてはSmad7が3TPプロモーターに有意に結合したが、Smad-3/7並びにTCF8を過剰発現させた細胞では、これら3つのタンパク質が同プロモーター上に会合したことから、TCF8はSmad7存在下においてSmad3をプロモーター上にリクルートし転写活性化に機能することを示唆した。
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