研究概要 |
A) CpG癌ワクチン治療と放射線治療の併用治療法の開発 リンフォーマや肉腫はこれまで開発してきたTh1細胞治療やCpG癌ワクチン治療に対して感受性が高かった。しかし上皮癌は免疫治療に耐性であり、免疫治療法と既存の治療法の併用治療を考案する必要があった。そこで既に開発済みのCpG癌ワクチン治療と放射線治療を併用したところ、所属リンパ節や腫瘍内における癌特異的CTLの誘導効率が相乗的に上がり、治療効果が増大した。このことは放射線治療法の併用により免疫治療効果が増強されることを示している。 B) 担癌生体内における免疫抑制機構の解明とタイプ1型抗腫瘍免疫活性化の重要性 上皮癌は免疫治療法に耐性であった。よって上皮癌は肉腫とは異なった、強い免疫抑制機構を有していると考えた。そこで肉腫と上皮癌のTGF-β活性を比較すると上皮癌でTGF-β活性が強いことが明らかとなった。上皮癌担癌マウスの所属リンパ節ではTregが増加しており、抗TGF-β抗体の投与によって抑制された。担癌生体内におけるTregの役割を検討するために抗CD25抗体によってあらかじめTregを除去したところ、興味深いことに肉腫はすべて拒絶されるが、上皮癌は拒絶されなかった。抗CD25抗体処置マウスではTregの数がすぐに回復しているのではないかという仮説を立て検証した。その結果,予想通り抗CD25抗体処置マウスに上皮癌を接種したとき、所属リンパ節において5日以内にTregの回復がみられた。一方で拒絶される肉腫では抗CD25抗体処置後にTregの回復が認められなかった。このTregの回復は上皮癌においてTGF-β産生が強いためであろうと予想されたため、抗CD25抗体処置マウスに上皮癌を接種し、それと同時に抗TGF-β抗体を腹腔内投与した。その結果、Tregの回復が抑制され、さらに上皮癌拒絶することに成功した。
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